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ChronoBox -クロノボックス- 感想

 08, 2017 21:03
20170529.jpg

屍ね――というなかなかに男前な惹句で注目を浴びたクロノボックス。
ミステリアスな粗筋とグロいCGで期待した本作ですが、結論から申しますとそれなりに期待に応えてくれたと思います。
シナリオは駄作などで話題を浚った桜庭丸男さんですのでそういう意味でもハードルは高くなってしまいがちでしたが、そこの最低ラインもクリアされていたのではないかと。



以下、物語の核心部分にも触れておりますのでネタバレがイヤな方はブラウザバックぷりーず。










舞台は離島の学園EDEN。
平和な学園生活、女の子と仲良くなって結ばれて…と思ったらループして別の女の子と仲良くなってまたループしてそして死者がでたり謎の少女「屍」が現れ、黒い箱の登場とともにクラスメイトが減っていく、徐々に不穏な方向へ話が進んでいくというのが大筋の流れ。
ループ前の記憶を基本的に主人公は持っていませんので、全てを俯瞰で見られるプレイヤー=主人公というタイプの話では無いですね。
様々な伏線、布石がばらまかれているのはわかりますが最初は見ている側としてはわけが分かりません。これをどう収拾をつけるのか興味津々であります。

2人ほど消えたあたりで私が想起したのは、ジョン・キューザック主演のとある洋画でした(分かる人はすぐに分かるでしょう)。よくある題材をうまく使ったミステリ映画の良作なのですが、本作はその類似ネタかなと当たりをつけました。
徐々に人物が減り、その構成要素が統合されていく感じからそういう印象を受けました。特につつじ子とあざみ子の関係あたりはモロそれ系っぽかったので。
要は、本作は多重人格ネタであり、人格を消去あるいは統合していく話なのではないかと考えたのですね。
結果的には当たらずといえど遠からずだったわけですが、さらに一捻り二捻りしてあるシナリオには唸らされました。

ループにループを重ね、徐々に人が減り、黒山羊さん登場でもう完全に何が何やらわからなくなってしまいました。
ループ回数ごとに設定が変わっていったりもするのでこれは仮想空間でのなにかかな?と「らせん」的な要素を感じとったりもしました。
夜々萌先輩がコロコロされたときの山羊さんのセリフなどで、どうやらEDENは何かに管理された空間で実験?のようなものが行われていることは確信できましたが、それがどんな結末・真相を迎えるのかはさっぱり分からない状態。
ただこの「管理された実験ネタ」というのはちょっとだけ私のモチベを下げたのも事実です。
コレを大オチに使うとわりと何でもありになっちゃうので伏線とかの回収が適当になりがちなんですよね。
コンシューマの某シリーズでグラサンが出てきたときに似た感情が湧き上がってきます。

それはさておき、興味を引いてグイグイ読ませる文章ではあります。後述するキャラ名の難読さ以外は読みやすい。
そして提示される謎、疑問の奔流が読み手を襲います。
周回によっては地の文で「エデン」の表記が違ったりしており舞台そのものが違うのではないかとの疑問が噴出。
OPで流れる反転した島の画像から、これは二つの舞台で並行して進んでいるのではないかと思い当たります。
某ミステリ作家の某グロ小説にあるようなトリックですね。
ただ背景が鏡像になっている周回もあるので現実で並行しているわけではないとも分かります。結果この考えは当たっていなかったのですが考える楽しみの大きい作品です。
様々な情報は脳内で錯綜し、五里霧中状態。
毎周回冒頭で行われる「歓迎会」は一体だれを歓迎しているのか。転入生とは誰なのか。そもそも存在しているのか。
謎は深まります。
うまいことシナリオライターの思惑通りに行ってる様相です。

後半はもうほぼほぼ物語への興味のみで読み進め、推理考察を全放棄していました。
終盤に至って、本当の舞台「EdEn」は多重人格者を収容する施設であったことが明かされ、その中に健常者を混ぜる実験がことの発端であったことなど種明かしが行われていきます。
ばらまかれた伏線はしっかりと回収されてます。
口パクの使い方などメタ的なネタの利用法も上手いですね。序盤からキャラにエロゲについて語らせたりとメタの存在に自覚的なテキストだなぁとは思っていましたが。
健常者である樺音(≒屍)の復讐のために主人公が望んだ、ログワールド内で艱難辛苦を自らに与え続けるという設定。
それに乗じて娘の遺体を損壊した実行者への復讐を行う雫流せんせというある意味二段構えの物語で、ネタバラシ的にはほほーと思いました。よく出来ていたと思います。

概ねの流れ、粗筋には納得できますし非常に楽しめたお話でした。よく比較されるeuphoriaよりも細部は凝っています。個人的にはあっちの方が好きですが。

ただ全ての真相を知った上で思い返すと不満点が多々出てくるのですね、これが。
いくつか挙げます。

①主要人物以外のキャラの扱い。果たして必要だったのか。
特に何か知っていそうな志依や合唱部に絡んでいた晦など意味ありげで意味のなかったキャラの存在はもう少しうまく処理できなかったものかと。更に、前述しましたがいちいち読めない名前なのも物語への没入を阻害していますね。キチ揃いなのでリアルでの被りをさせない配慮なのかも知れませんが、ゆうても18禁なのでそこまで気を使う必要もないでしょうし、名前に核心に触れるネタがあるのかと思えばただの植物つながりらしいですし、うーん。

②樺音を紛れ込ませた計画の杜撰さ。
ギフト持ちの中に健常者を入れて反応を見たりする実験だったはずなのにさほど熱心に観察している様子が無いのはおかしいです。本来ならいろんな場所にカメラを配置したりするべきでしょう。
さらに樺音のカルテに馬鹿正直に健常者であることを記載しているのもおかしい。だって雫流さん以外にはバレちゃマズいわけなのだからなんらか改ざんしておくべきでしょう。そのカルテが普通に見られる場所にあるのもザルすぎて萎える点。確かに樺音の正体がバレなきゃ話が進まないので仕方ないのですがこのシナリオの都合のザル管理で、そのせいで樺音殺されましたとか非常にモヤモヤします。
しまりのさん(別名義)が無能に見えるのはいかんと思います。

③現実の樺音周りの描写不足。
那由太と樺音の交流が薄いので贖罪や復讐とか言われてもイマイチピンと来づらいかなと。もっとイチャイチャ描写を入れるべきだったかなぁ。それこそログワールド内でのイベントをいくつか削ってでも那由太と樺音のふれあい、心の交流シーンはもっと描いておくべきだったでしょう。エロまでは(当然)行けないにしても。

④諸悪の根源キャラの惨殺シーンが無い。
キ印5人組で唯一まころ(小鳥)が殺されるシーンがカットされているのは、カタルシスの観点から言っても画竜点睛を欠く感じがします。実際そのパートの時点ではまだ真相は明らかにされていないのでリアルタイムでのスッキリ感は得られないにしても、ネタバラシ後の心情としては全ての原因と言っても良いまころ(小鳥)が無残に陵辱惨殺されるシーンは必要だったと思います。

大きな不満はこのあたりです。それ以外にも細かな疑問は無くはないのですが一応自分の中で説明付けられるので別にいいです。
作中で明かされない謎もいくつかあったりもしますが考察は可能ですね。ダイイングメッセージとか。
超序盤の「食事会の食べ残し」にあんな意味を持たせてくるとか、伏線回収はかなり丁寧にされている印象です。

エンディングはスッキリ終わるという感じでもないですが真ヒロインがすでに死んでいるのでどうあがいてもハッピーになり得ない中よくまとめていたと思います。
トゥルー後に表示されたタイトル画面の一枚絵で色々報われた感。
タイトルのクロノボックスも「黒い箱」や飛行機のブラックボックス、また人体のブラックボックスたる脳など幾つかの意味を持たせていて良いネーミングだと思いました。

エロについて。
結構濃いめのエロで尺もそこそこあり悪くなかったと思います。
淫語フル稼働なのが作風に合っているとは言い難く、意見が別れるところでしょうが、シーンのほとんどが現実ではなくログワールドでのものなので、那由太の抑圧された性欲の発露と考えれば納得できます。その証拠に唯一現実でのエロシーンである樺音陵辱のみ淫語が控えめ。
それから女装男子御伽とその状態でのシーンが無かったのが個人的には片手落ちだったかなと。女性化状態でのシーンはありますがいやいやそうじゃないだろと。
桜庭さんには駄作での実績もあったので期待したんですけどね…。でもまぁその御伽のオナニーシーンは面白かった(≠エロかった)ですし御伽が猶々をレイープするのも良かったのでオマケで合格判定します。

もう一つのウリであるグロ描写について。
個人的にはもう少し頑張って欲しかったかなぁ。
グロいはグロいんですが駄作ほどの容赦の無さ、狂気は感じませんでした。
屋上で4人の生首が出迎えるシーンは切り貼りではなく専用のCGを用意して欲しかったですし、「食べたのね?」のところで実際のお食事会の絵を挿入するのもアリだったでしょう。
キャラの立ち絵が不具に変わっていく感じはク・リトル・リトルみたいで良かったと思います。

システム周りは使いやすく、いい感じでした。
バックログからのジャンプもあるし、私の求める標準的性能はクリアしていました。
スキップがやや遅いかなというのと、ゲームシステム上の場所選択がテンポを阻害していたというのがわずかな不満。

幾つか文句を付けましたが、全体的に見てよく練られた面白い物語だったとは思います。
グロがプッシュされた広報だったので万人には受け入れられづらいかと思いますがそれでも総合的に見て今のところ2017年を代表する作品なのではないかなと。

うーん。非常に感想の書きづらい作品だなぁ。
文章が支離滅裂になってしまいました。思ったことをうまくアウトプットできないです。
多分世間にはもっとうまくまとまった感想があると思うので興味を持たれた方、考察を求める方は探してみるのもよろしいでしょう。
私も少し見てみることにします。

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