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月影のシミュラクル -解放の羽- 感想

 01, 2017 23:10



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前作「時をナントカ」で私をガッカリさせてくれたあっぷりけの最新作です。
最初のルートをスマホ無料アプリで先行公開という形を取っていましたのでそこまではプレイ済でした。なかなか良いヒキでオモシロイと思ったので本編も購入。
まぁアプリの前フリがなくとも、桐月さんシナリオのあっぷりけ作品ということで買っていた筈なんですけれども。
プレイした感想としては流石は桐月さんという感じでしょうか。安定感。

ほんとにマジで前作の凡作っぷりが桐月さん不在によるものだったんだなぁと確認できたのは収穫でしょうね。
あっぷりけは今後安定して売りたいなら絶対に桐月さんを手放しちゃダメですよ。
コンチェルトノートや黄昏のシンセミアといったヒット作の版権が現あっぷりけには無いようなので(桐月さんのツイッターより)尚更ココからが大事。本当は前作も大事だったんですけどなぜその大事な作品で桐月さん以外のライターを起用したのか、理解しかねる部分もありおりはべり。
まぁ今更言ってもしゃーないのでシミュラクルの話に戻します。

物語は伝奇ものに分類される感じでしょうか。人と人ならざるモノとの話という意味ではコンチェルトノートや黄昏のシンセミア、はなのの等と似たテーマではあると思います。ただ、それらと比較して話は結構重ため。
生き人形を管理する一族に絡むお話ですね。そういうの嫌いじゃないです。
儀式だの因習だの人形だの吸血殺人だのおどろおどろしいのは好物と言って差し支えないので非常に楽しんでプレイできました。
桐月さんのテキストは安定感ありますのでその面でも桐月さんの帰還は喜ばしいことです。
重い話ではありますがボリュームはミドルプライスのそれなのでさほどヘヴィにこちらを圧迫してくる感じでもないのは良いですね。重すぎず軽すぎない絶妙な塩梅で旧い一族にまつわる物語が紡がれていきます。
構成的にはいくつものエンドとバッドエンドを積み重ねてフラグを立てていって最終的にトゥルーが開放される感じですがこの積み重ねが過去生き人形に翻弄されてきた歴史を彷彿とさせてくれます。
あっぷりけ名物赤いCGもしっかり完備。
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サブタイの解放の羽も、生き人形紅が支配から解放されるとともに、如月に連なる者たちも過去から解き放たれて未来に進んでいけるというピッタリのタイトルだったと思います。

ところで、トゥルーまでプレイ終わったあと、私はとある作品のことを思い浮かべました。
それは紙の上の魔法使い。以前感想を書きましたがあれはあれでよく出来た作品ではあると思いますが同時に二度とプレイしたくないけったくそ悪い話としてマイメモリーに刻まれています。
そんなかみまほのクリソベリルと今作の生き人形「紅」に若干の類似を感じました。
いずれも関わる人間を翻弄し、破滅に導くジョーカーでした。多くの悲劇を齎した災厄の存在。
しかしながら、クリソベリルは大っ嫌いで顔も見たくないのですが紅にはそういった感情は抱きませんでした。
なぜかと考えるとキャラデザの好みやキャラの可愛げ有る無しもさることながら物語の構造なのかなぁと思います。
かみまほはある部分までの悲劇は決定されたものとして常に存在し続けます。前提条件であり設定であってルートを違えたとしてもその部分は覆りません。その悲劇部分こそが私がクリソベリルを嫌う大きな要因であると同時にかみまほを二度とプレイしたくないと思う要因です。
一方こちらはルートはルートとして一応パラレルに存在しているのでキャラクターに降りかかる悲劇は確定されたものでは無いのでそこがかなり違っています。
また悪意を振りまく存在としては紅もクリソベリルも同様ですが紅の悪意は本人固有のものではなく周囲の人間の感情が反映されたものであるので紅だけの責任では無いというところも大きいのかなと。
かみまほのトゥルーエンドで最も気に入らないところはあれだけ多くの人生を引っ掻き回し続けたクリソベリルがなんだか唐突に赦されてちょっと幸せ掴んじゃったりしてるところですが、それは紅も同様です。ではどこが違うかというとトゥルー前に紅と主人公が心を通わすルートがちゃんとあるので感情移入がし易い土壌があるという点は大きいです。そこがシミュラクルは上手かった。
かみまほが悪印象のみを残したかった意図があったのならば、あれはあれで大成功ですけどね。

そんなわけでやや全体のボリュームは物足りなくもありますが、桐月さんのテキストはやはりイイなぁと思うのです。シナリオ構成もちゃんとしてるし、得難い替えの利かない存在であると思います。

キャラクターはやや地味な印象は拭えないものの、零は再会系幼馴染として見た目も中身もかなりの優良株ですし、一葉も万能突撃クソメイドっぽい強かな感じは悪くないです。
こうなると美優の地味さがひときわ目立ちますね。正直ヒロインに据える必要があったのか、やや疑問が無くもないです。Hも一回しか無いし。
見た目は可愛いですけどねぇ。
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そして紅。前段でちょっと触れていますが、人間外のものとの交流物としてはよく出来ているのではないでしょうか。同じ桐月さんの作品だと紅蓮華のくおんっぽさを感じました。紅ルートに入るまでは、ちょっと印象良くないですけど。

えっちシーンは美優1回、零と一葉2回ずつ、紅3回。内容はごく普通で尺もそれほど長くはなく、とりあえずあるだけという印象は拭えないかなぁ。もうちょっと頑張れたとは思いますがミドルプライスのシナリオゲーなのでこんなものでしょうか。
特にアブノーマルな行為もなくほんとに普通です。野外で着衣対面座位はちょっとめずらしい絵面かも知れませんけど。
これ、もっとドエロくするかしたほうがより旧家の因習伝奇ものっぽくなったと思うのです。生き人形が精気を欲している設定もあるわけですし。
シナリオ分量的に難しいのは分かりますけどそこをなんとか、というやつです。

システムは相変わらず良好。
全体が短いのでいつものフローチャートよりやや大雑把に感じましたが使い勝手はとても良いですし、バックログからのジャンプもあるしプレイアビリティは文句ないですね。
気になったのは誤字脱字。それほど多くはないですがちょいちょい散見されました。真面目なシーンであると若干萎えますよね。
あと、先行アプリ版では大丈夫だったのにこちらで急に誤字ってるところは一体なんだったんだろう。
「如月」が「兼定」になっている部分が2ヶ所ほどありました。わざわざアプリと変えているから何かの伏線かと思ったらそんなことは無かったです。

総合的には面白いし概ね良作でした。
桐月さんの復活、前作で下げたあっぷりけ株の挽回を喜びましょう。
ミドルプライスですし、ハズレでも被害は少ないので是非プレイしてみてください。

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